ラーメンズ『home』より「映画好きのふたり」

~この台本を使用する際のルール~

・これは、コントグループ”ラーメンズ”の作品です。

・上演の前後や熱量の度合いについては問いませんが、下記配役表に記載されているリンク先の動画並びにYouTubeの公式アカウントのプッシュをお願いします。動画で得られる広告収入は日本赤十字社を通じ寄付されます。

以上



声劇”ラーメンズ『home』より「映画好きのふたり」”

作者:ラーメンズ / 青木 ××

小林:

片桐:

URL(YouTube): https://www.youtube.com/watch?v=0Zw3Bpu4OLc




  小林、テレビに見いっている

  片桐、何かを探している

片桐「なあ、耳かきある?」

小林「……うーん」

片桐「いや、うーんじゃなくてさ」

小林「……え?」

片桐「耳かきある?」

小林「……ああ。……あ、え?」

片桐「だから、耳かきはどこにあるんですか?」

小林「……あっ、おーおー、耳かきね」

片桐「そうだよ、どこ?」

小林「……………………えっ?」

片桐「お前、髪の毛で首を絞めてやろうか」

小林「うん……え? いやいや」

片桐「何をさっきから一生懸命見てんだよお。……あ、これ正月番組の再放送じゃないか」

小林「年末年始仕事だったから見られなかったんだよ」

片桐「もういいよ、自分で探すから」

小林「あ、すっげ、満点……」

  片桐、抽出しの中に何かを発見する

片桐「あっ! お前何こんなもん集めてんの?」

小林「っ! おい、やめろよ!」

片桐「これ、あれだろ? シュウマイに付いてる醤油入れだろ?」

小林「やめろよ! 触るなよ!」

片桐「すげーな。百個くらいあんじゃん」

小林「いいだろ! かわいいんだよ!」

片桐「ふーん。……なあ、これなーんだ?」

小林「あっ。おい、返せよ!」

片桐「おっと、耳かき」

小林「……持ってない」

片桐「ほほう、そういうことなら、このヒョウタン醤油入れちゃんは……どうなっても知らないぞ‼」

小林「くそう、なんてこった……。黒いペン立てにさしてある、白い筒の中さ!」

片桐「悪いな、ほらよ。……っ! 貴様ー! だましたな! こいつは体温計じゃないか!」

小林「あんたもほとほと人がいいや」

片桐「……はーっはっはっは。人がいいのは……果たしてどっちかな⁉」

小林「っ! こいつはピーナッツじゃないか!」

片桐「悪いなカウボーイ! 俺もそこまでお人好しじゃあないんでね! さあ、本物を返してほしけりゃあ、耳かきをよこしな‼」

  小林、耳かきを取りだして、片桐に渡そうと歩み寄る

  「おっと! そこから耳かきを投げろ。下からそーっとだ」

  小林、投げる

  「ほほう、確かにこいつは上物だ。本つげか」

小林「さあ、ブツを渡したんだ。早くモノ質を返してくれ!」

片桐「おやあ! ブツを渡せば、こいつを返してやるなんて、誰が言ったかな⁉」

小林「貴様、汚いぞお!」

片桐「ああそうさ、俺は汚いのさ。だから今からこの耳かきで、きれいになるのさ!」

小林「待ってくれ! 取引をしないか?」

片桐「……はっはっはっは。笑わせるな! 今のお前は、そんなことを言える立場じゃないだろう!」

小林「ぼくはもう一本、耳かきを持っている」

片桐「それがどうした? 俺はこの高級本つげ耳かきを手に入れたんだ。あとはこのヒョウタン醤油入れちゃんを、どういたぶってやるかだけだよ”」

小林「その、もう一本の耳かきに、綿毛が、ついていたとしてもか?」

片桐「なな、なんだってー!」

小林「しかも、桐箱入りさ‼」

片桐「うぬう! ……欲しい!」

小林「さあ、同時に投げ渡し合う、ってのはどうだい?」

片桐「いいだろう。この耳かきととヒョウタン醤油入れちゃん、一緒に返してやる。そのかわり、妙なマネはするなよ」

小林「わかってる。こっちは丸腰だ」

二人「せーの」

  二人、同時に投げ合い、キャッチする

小林「よく返ってきたね、大丈夫かい? けがはないかい? あああー、キモチイイー!」

片桐「ほほーう。さすがは綿毛つき、入れ物も豪華絢爛! ……っ! 貴様! だましたな! こいつは……ロケット鉛筆じゃないか‼」

小林「こいつが神の下した答えさ! アディオス‼ ヘイ! シルバー‼」

片桐「またしてもヤツになられたー‼ バキュン、バキュン‼ ……? 誰か来たぞ」

小林「出てくる。……はい……はい……ああ、……すいません……はい、失礼します」

  二人、座る

片桐「となり?」

小林「壁、薄いんだ」

片桐「ふうん。……あのさ、耳かき貸して」

  小林、普通に渡す

小林「はあああ。引っ越したいなー。だだっぴろいマンションみたいなのに」

片桐「ああ、いいねえ」

小林「見た? 『ブラックボードメイソン』で主演のニール・ベックが住んでた部屋」

片桐「ああ、ビルの最上階の」

小林「そうそうそう、で、ベッドルームでヘレン・ボーラが寝てんの」

片桐「全裸で」

小林「うひいいい。でさあ、FBIから電話かかってきてさ『おい、カーチスのシンジケートが動き出した、今すぐ……』観よう、ビデオ持ってんだ俺」

片桐「おう、観よう観よう観よう。へー、なにー? サミー・ベン好きなんだ?」

小林「うん! サミー作品は全部観た」

片桐「全部⁉」

小林「……うん、全部」

片桐「全部?」

小林「そうだよ」

片桐「じゃああれは、『ハニーラングウェッジ』は?」

小林「観た」

片桐「『パイロットストーン』は?」

小林「観た」

片桐「『毛糸の人は』は?」

小林「観た」

片桐「『クリスマス・ビレッジ』は?」

小林「……うん」

片桐「ややや、うんじゃなくてさ。観たの、観てないの?」

小林「ううん、まあ、あのお、うん、あのお、み〇✕△……」

片桐「ん? 観たの、観てないの?」

小林「うん、〇✕△……」

片桐「〇✕△? え?」

小林「観たよ!」

片桐「ホントに?」

小林「ホントだよ」

片桐「じゃ、内容言ってみてよ」

小林「まず、なんか人が来て、で、なんか人が出てくるやつでしょ」

片桐「……なんだ観てんのか。それじゃあさあ、あれは『ギミックマン』」

小林「あああ、あれな。もちろんだよ」

片桐「もちろん、観たの、観てないの?」

小林「ああ、うん、あのお、うん、み〇✕△……」

片桐「もっと、はっきり言ってくれない?」

小林「〇✕△」

片桐「〇✕△? 観たのか、観てないのか、だから」

小林「……〇✕△てない」

片桐「観てない?」

小林「観た、観たよ!」

片桐「ホントに?」

小林「ホントだよ」

片桐「ホントに?」

小林「ホントだよ!」

片桐「内容言ってみ?」

小林「あのなんかあれだろ、こう、いろいろ動いてるやつだろ?」

片桐「……なんだ観てんじゃん。あ、じゃあさ、あれは? えー……『ゴールデンハンマー』」

小林「おう、観た」

片桐「ねえよ! そんな映画」

  小林、一本のビデオテープを取りだす

小林「あったよ『ブラックボードメイソン』」

片桐「なんだよ、『ゴールデンハンマー』って」

小林「観ようぜ」

片桐「柳生かよ」

小林「ツメ折っとかないと、いてっ。かてーなこれ。なあ、爪切り、さっき貸したよな」

片桐「えっ?」

小林「貸して、早く、爪切りだよ」

片桐「えっ?」

小林「つ・め・き・り、だよ! 早く貸して!」

片桐「はっ⁉」

  片桐、立ち上がって元気よく

  「お前……まさか!」

小林「お願いだよ……。最後の一回にするからさ……」

片桐「こいつ……まさか! 爪切りに手を出したのか!」

  小林、中毒患者のように

小林「……切らせてくれよう、……気持ち良くなりたいんだよう」

片桐「だめだー‼ 今ここで爪切っちまったら、これまでの回復センターでやってきたことが台無しじゃないか!」

小林「頼むよう‼ 最後の一回にするから……あああああ‼ 天井に、おびただしい数のナマケモノがぶらさがっている‼ おい、爪が伸びてるぞ‼ おい! おい!」

片桐「しっかりしろ‼」

小林「うっ、ううう!」

  小林、失神する

  片桐、小林を抱き抱える

片桐「しっかりしてください! 大統領! ……おい! 誰かウイスキーをもってこい!」

  片桐、ウイスキーを口にふくみ、小林に吹きかける

小林「……今まで、俺は何をしていたんだ……」

片桐「よかった、もう元の大統領なのですね? エイリアンは抜け去ったのですね?」

小林「心配かけて悪かったな」

片桐「……大統領!」

小林「ところで一つ、お前に頼みがあるんだが」

片桐「……え?」

小林「腹が減っているんだよ‼」

  小林、口から触手を出して片桐の顔をつかむ

片桐「ぐあああああああ‼」

小林「おい! クライトン中佐! そいつは何だ!」

片桐「たった今、あんたの口から出てきたバケモンだよ大統領! ぐあああ! さあ、こいつを撃ってくれ!」

小林「し、しかしこのままでは君にもあたってしまう!」

片桐「何をのんきなことを言ってるんだ! こいつを今殺さないと、国家の存亡に、いや、地球の未来にかかわってくるんだぞ!」

小林「アメリカ万歳!」

  小林、バズーカを発砲する

  「……マイケル君、目をそむけちゃあいけない。君のお父さんは、立派な軍人だ」

片桐「う……うう」

小林「……なんてこった! エイリアンが、今度はクライトン中佐に乗り移ったというのか⁉」

  片桐、立ち上がりながら

片桐「知ってるかい大統領、一ドルコインには……防弾チョッキの効果も……あるんだぜ‼」

小林「ばっきゃろー‼ 君こそ本当の英雄だ! 大統領命令を下す、明日から君は最高司令官だ!」

片桐「いや、悪いが大統領、俺は出世には興味がねえ。そんな肩書き、いらねえよ!」

小林「お前なら、そう言うと思たよ。でもこのままでは、こちらの気がすまない。そうだ、欲しいモノはないか? 金か? 車か? 土地はどうだ?」

片桐「そうだな、そこまで言うなら一つだけ」

小林「おお、なんなりと」

片桐「……缶コーヒーを一杯、おごってくれよ」

小林「……こいつぅ! ……君は本当に、バカでマヌケでうすらトンカチで……最高の友達だぜ!」

片桐「ほーら、マイケルおいで! ……わたくし、クライトン中佐、本日より長期休暇をいただきます!」

  片桐、立ち去る

小林「……」

片桐「……」

小林「おい、かんじんなことを忘れていた!」

  片桐、振り返る

  「最後にこれだけは言わせてくれ……Merry X'mas!」

片桐「Merry X'mas!! ……? 誰か来たぞ」

小林「出てくる。……はい……はい……ああ、……すみません……はい、失礼します」

片桐「すみません」

小林「……」

片桐「いいじゃんなあ、ちょっとくらい」

小林「まあ、夜遅いから。……ちょっと、そのみかん取って」

片桐「なにい! お前まさか!」

小林「やらないよ、自分で取る」

片桐「ええ……」

小林「観よ! 『ブラックボードメイソン』」

片桐「観よう観よう、観なきゃね」

小林「……」

片桐「……え!」

小林「あ? ああ⁉ あああー‼」

片桐「お前、なに上から紅白録ってんだよー!」



〈FIN〉





この台本は、小林賢太郎・著「小林賢太郎戯曲集 home FLAT news」に掲載されている”home”の”映画好きのふたり”を書き写し、声劇に用いる際に違和感のないように付け足し・差し引きをしたものです。YouTubeの公式アカウントにより投稿されている”ラーメンズ『home』より「映画好きのふたり」”を書き起こしたものではありません。ご了承下さい。

ラーメンズ公式YouTubeアカウントはこちら

小林賢太郎さんのHP”KENTARO KOBAYASHI WORKS 小林賢太郎のしごと”はこちら

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作成日時:2019/06/05/00:00

改訂:2019/06/05/00:15

青木 ××の言葉

僕、青木 ××が書いたセリフや声劇台本を掲載しています。 ふと思ったことだったりも投稿したりするかもしれません。

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